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コラム:リーダーシップ開発


リーダーシップ開発には様々な理論がありますが、今日は2022年のATD ICEのバーシャルセッションにも登壇された、ケン・ブランチャードのリーダーシップ開発理論の概要をご紹介して行きたいと思います。

 

ケン・ブランチャードの代表的な理論は、「シチュエーショナル・リーダーシップ理論」です。リーダーが、メンバーそれぞれが担当するタスクごとに持つ能力及び意欲の状況に応じて、発揮すべきリーダーシップスタイルを変えることで、チームメンバーの能力と意欲を引き出すことに焦点を当てています。

これに加え、ブランチャードが近年注力しているテーマの一つは、「セルフ・リーダーシップ」や「サーバント・リーダーシップ」です。

今日は、シチュエーショナル・リーダーシップ理論の概要と、セルフ・リーダーシップ及びサーバント・リーダーシップについてご紹介します。


 

Agenda

1.    シチュエーショナル・リーダーシップ理論

2.    セルフ・リーダーシップ

3.    サーバント・リーダーシップ

 

1.    シチュエーショナル・リーダーシップ理論

シチュエーショナル・リーダーシップ理論の中心的な考え方は、「最適なリーダーシップスタイルは、状況に依存する」というものです。リーダーは、チームメンバーの成熟度やタスクの難易度に応じて、柔軟にリーダーシップスタイルを変更することで、チームの生産性の向上を実現させます。

リーダーシップスタイルを選択する際に考慮すべき「メンバーの成熟度(Development Level)」は、能力(Competence)と意欲(Commitment)のマトリクスで表され、以下の4つのレベルに分類されます。

D1: 低い能力・高い意欲(タスクに対する意欲は高いが、スキルや経験が不足している状態)

D2: ある程度の能力・低い意欲(スキルを身に着け始めているが、まだ十分な自信や意欲が欠けている状態)

D3: 高い能力・低い/変動する意欲(タスクを遂行するスキルを持っているが、モチベーションが不安定な状態)

D4: 高い能力・高い意欲(十分なスキルと経験を持ち、意欲的にタスクに取り組むことができる状態)

 

上記4つのメンバーのレベルに応じて、リーダーは発揮するべきリーダーシップスタイルを選択します。以下4つが、発揮するべきリーダーシップスタイルですが、例えば、D1レベルの部下にはS1(指示型)が適しており、D4レベルの部下にはS4(委任型)が最適です。これにより、メンバーの成長とパフォーマンスが最大化されます。

 

■指示型(S1: Directing)

特徴: リーダーが具体的な指示や指導を行い、ほぼ一方的に意思決定を行います。

適用状況: メンバーの能力が低く、タスクに慣れていない場合。意欲は高くても、経験やスキルが不足しているメンバーに対して有効です。


■コーチ型(S2: Coaching)

特徴: リーダーは指示を出すと同時に、フィードバックを提供し、メンバーとの対話を促進します。リーダーは意思決定の責任を持ちつつも、メンバーの意見を取り入れるスタイルです。

適用状況: メンバーがタスクにある程度の経験を持っているが、まだ完全には自立していない場合。意欲は高いが、能力に自信がない場合に有効です。


■支援型(S3: Supporting)

特徴: リーダーはメンバーの意思決定を支援し、指示を最小限に抑えます。メンバーの感情的なサポートやモチベーション向上に焦点を当てるスタイルです。

適用状況: メンバーが能力はあるが、意欲や自信に欠ける場合。タスクの遂行に必要なスキルは十分に持っているが、自己動機づけが必要なメンバーに適しています。


■委任型(S4: Delegating)

特徴: リーダーはメンバーに意思決定と責任を委任し、ほとんど関与しません。メンバーは自律的にタスクを遂行することが期待されます。

適用状況: メンバーが高い能力と意欲を持っている場合。タスクに対して自信があり、リーダーの指示なしでも成果を出せるメンバーに適しています。

 

2.    セルフ・リーダーシップ(Self Leadership)

セルフ・リーダーシップは、リーダーシップがトップダウンではなく、すべてのメンバーが自らリーダーシップを発揮することが重要であるという考え方です。これは、従来のリーダーシップ理論がリーダーからフォロワーへの影響を中心にしていたのに対し、各メンバーが自発的に責任を持ち、リーダーシップを取ることを提唱している点が特徴的です。

セルフ・リーダーシップは、特にリモートワークやフラットな組織構造が一般化した現代のビジネス環境において重要性が高まっており、その点から2022年のATD ICEでも紹介されていました。この理論では、組織内のすべてのメンバーがセルフ・リーダーとして行動し、リーダーシップの役割を共有することを目指しています。

セルフ・リーダーシップの特徴は「自主性と自己責任」及び「内発的動機づけ」「自己評価と自己管理」にあります。


【自主性と自己責任】

 メンバー自身が目標設定、問題解決、意思決定に積極的に関わり、リーダーシップを取る。

【内発的動機づけ】

 自分の目標や価値観に基づいて、モチベーションを維持し、リーダーとして行動する能力を強化。

【自己評価と自己管理】

 自己の行動を振り返り、改善し、自己効力感を高めることで、より効果的に成果を上げる。

 

3. サーバント・リーダーシップ(Servant Leadership)

ブランチャードは近年、サーバント・リーダーシップの重要性をさらに強調しています。サーバント・リーダーシップは、リーダーがチームメンバーや組織全体の成長と幸福を優先し、サポートすることに焦点を当てたリーダーシップスタイルであり、以下4点の実践を指します。


【奉仕の精神】

 リーダーは自分自身の権力や利益よりも、チームや組織全体の成長や幸福を優先する。

【エンパワーメント】

 リーダーはメンバーが自らの潜在能力を発揮できるよう支援し、メンバーに権限を委譲する。

【リスニングと共感】

 リーダーはメンバーの声を積極的に聞き、彼らのニーズや課題に共感しながらサポートする。

【成長の促進】

 リーダーの役割は、メンバーの成長を促進し、個人としてもプロフェッショナルとしても

 成長できる環境を提供することです。

 

ケン・ブランチャードのリーダーシップ開発理論は、非常に本質的であり且つ実践的です。

特に、日本でも転職が一般的になり、人材流動性が高まり組織構成人員の多様化が加速化する昨今、特に「サーバント・リーダーシップ」は欠かせない要素であり、全てのピープルマネジャーに実践して頂けると非常に有用なのでは無いかと思います。

サーバントリーダーシップについては、2022年のATD ICEでもブランチャード著の「Simple Truths Leadership」が紹介されていました。日本語版が発行されていない点が残念ですが、ご関心があれば是非お読み頂ければと思います。


文:ATD-MNJ理事 木下梨紗

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